シュタイナー教育におけるおもちゃについての基本的考え方
シュタイナー教育は、知識だけでなく、感情、意志、創造性、倫理など、人間の全体的な側面を育成することを重視します。
シュタイナーは、人間は「からだ」「こころ」「精神」が7年周期で発達していくと考えました。0〜7歳は、意志を育む時期で、からだが最も育つとき。特に神経・感覚器官が発達するので、遊びがその成長を助けることになります。
では、どんなおもちゃが心豊かな遊びには必要でしょうか?
なるべく自然素材に近い木や布などでつくられ、想像力を高めることを後押しするようなものがよいでしょう。
逆に、電子音の鳴るものや、キャラクターものは、こどもたちの想像性を阻害する可能性があるので避けた方がいいでしょう。
ただし、シュタイナー教育に適したおもちゃはこれしかないといった形で、手法だけを切り取ってしまわないように注意が必要です。
なぜなら、目的はあくまでもこどもたちの発達段階に合わせ、想像力を高めることにあるからです。
決まり事が明確にあるわけではありません。あくまでご参考として、シュタイナーの考え方を体現すると思われる代表的なおもちゃについて、これから取り上げていきます。
シュタイナーの代表的なおもちゃの種類と特徴
◆蜜ろう粘土、クレヨン
蜜ろう粘土とは、蜜ろう(蜂の巣から採取される天然の素材)を主成分とした手作りの自然素材の粘土のことです。
意図的に常温では固くつくられており、遊ぶときには手で温めてから使います。粘土の感触を味わいながら、想像力を働かせ、感覚を磨くことができます。
また、蜜ろう粘土は粒子が細かく、他の粘土よりも豊かな細工を加えることができます。天然の蜜ろうの甘い香りも特徴で、嗅覚の発達にもよい刺激になります。
一方、蜜ろうクレヨンは、蜜ろうを主成分として作られた自然素材のクレヨンです。通常のクレヨンとは異なり、合成材料を使わずに自然由来の材料を使用して作られます。
自然な顔料を用いて作られるため、美しい色合いと豊かな色彩を持っています。また、滑らかで柔らかい描き心地が特徴です。描く際に紙に滑らかになじみます。視覚、嗅覚、触覚などを活用しながら、楽しく絵を描くことができます。
◆積み木
シュタイナーの積み木は、一般的な積み木とはやや異なる特徴があります。
天然木を使用し、合成材料や化学物質を使わず、自然の素材が大切にされます。また、通常は塗装されていません。無塗装のままの自然な木の質感が重視されています。
形状は、あまり凝ったものではなく、単純な形状で構成されることが多いです。幾何学的な形や曲線的な形状が使われ、抽象的なデザインを持つことが一般的です。
つまり、こどもたちが自由にアイデアを形にすることができるように設計されています。
◆ウォルドルフ人形
ウォルドルフ人形は、シュタイナー教育の思想を背景にドイツで生まれた抱き人形です。
「ウォルドルフ」はドイツでシュタイナー学校として最初に開校したウォルドルフ学校のこと。つまり、ウォルドルフ人形はシュタイナー教育の象徴ともいえる学校の名前を冠した人形のことを言うのです。
ウォルドルフ人形にはいくつかの特徴があります。
まず、目や口がとても控えめな大きさです。こどもが自らの想像力を使って人形に働きかけることができるようにするためです。あえて印象がない顔にすることで、喜怒哀楽を自由表現することができるのです。
次に、肌触りの弾力です。体は綿のジャージー素材で作られており、中には羊毛がしっかりと詰めこまれています。これはこどもの肌の弾力に近づけるため。抱きしめた時にもあたたかみが伝わってきてこどもが安心します。
材料も、綿やモヘヤやブークレといった毛などできるだけ天然のものが使われています。
そして、手作りが基本です。子どものことを思いながら作り上げられた人形は、子どもにも作り手にも大切な存在になるからです。
◆楽器
シュタイナーは7歳までの子どもの意識には「レ・ミ・ソ・ラ・シ」の5度の音階の奏でるメロディーが快適で心地よいと考えました。これをペンタトニックの音階と言います。
ペンタトニックは自然な音の組み合わせで、心地よく調和のとれた音楽を奏でます。こどもたちの感性と感情を豊かに刺激し、平穏な心を育みます。
ペンタトニックの五音階によって、こどもたちは自分自身の表現や創造性を自由に追求することができます。また、少ない音の組み合わせからなるため、取り組みやすく、安定感のある音楽体験を得られます。
代表的な楽器としては、グロッケン(鉄琴)やライアー(竪琴)などがあります。
◆プレイクロス
プレイクロスは大人にとっては一枚の布にすぎませんが、こどもの想像力によってドレスやマント、コップあるいは湖やお花畑などにも変身し、遊びの大事なサポート役になります。
綿やウール、シルクなどの自然な素材が使われることが一般的です。こどもたちに触れることで心地よく感じられ、安心感を与えます。
また、豊かな色彩を持ち、こどもたちの目を楽しませるだけでなく、色彩が感情や気分に与える影響も重視します。
シュタイナーのおもちゃを手に入れるには
シュタイナー教育に使われる代表的なおもちゃを知ったとしても、どこで手に入れたらいいのか?何から用意すればいいのか?などよくわからないことは多いと思います。
そこで、シュタイナーのおもちゃを販売している代表的なお店のご紹介と、それを手作りする方法をウォルドルフ人形を例にお伝えしたいと思います。
◆購入する:代表的な販売店のご紹介
ここからご紹介するお店は、シュタイナーのおもちゃに限定せず、素材のよさを生かしたシンプルでナチュラルなおもちゃを幅広く取り扱っているところが多いのですが、
その中でも、シュタイナーのおもちゃは重要な役割を担っています。
実店舗を有するところがほとんどで、全国各地に点在しています。すべてのお店で、オンラインショッピングが可能です。
【おもちゃ箱】
そのルーツは1952年に、現代表(齊藤暁彦さん)のご祖母が嶺町幼稚園を設立したことから始まります。そこで園長をしていたお父様がシュタイナー教育と出会い、1986年にシュタイナー教育教材や楽器、木製おもちゃの輸入卸売りをする会社として設立したことが由来です。
会社として提供する3つの価値は1.真実にかなった物の提供 2.社会との調和 3.感覚教育の促進と、本物志向であり、その歴史からもわかるとおり、シュタイナーの主要なおもちゃ取り扱いの総代理店のような存在です。
シュタイナーのおもちゃを極めて幅広く取り扱っており、問い合わせ対応も非常に迅速かつ丁寧です。
【クレヨンハウス】
https://www.crayonhouse.co.jp/shop/e/eSteiner0/
クレヨンハウスは、作家の落合恵子さんが主宰する絵本、こどもの本、オーガニックライフ雑貨の専門店で、1976年にスタートし歴史を積み重ねてきました。
シュタイナーのおもちゃについても、オンラインショップにて重点的に取り上げており、代表的なおもちゃのジャンルごとの品揃えも豊富で、気に入ったものを選ぶことができます。
【ユーロバス】
https://www.eurobus.jp/?mode=grp&gid=1450497&sort=n
ユーロバスでは、ヨーロッパの幼児教育にならい、シンプルかつナチュラルなスタイルの子育てを後押しするおもちゃを多数紹介しています。
積み木など木でつくられたおもちゃのバリエーションがとても豊富なのが特色です。
なお、蜜ろうクレヨンやウォルドルフ人形なども扱っています。
【メルヒェン】
メルヒェンでは、素材にこだわり、子どもと大人の関わりを深めるための、安心で安全な温もりある木のおもちゃを中心に、絵本・シュタイナー教育教材などを扱っています。
シュタイナーのおもちゃとしては、蜜ろう粘土やクレヨン、楽器類の種類が豊富です。
オンラインショップだけでなく実店舗が横浜市栄区にありますが、事前予約制となっているので、ご関心のある方は直接店舗にお尋ねください。
神奈川県横浜市栄区野七里1丁目30-2 Tel:(045)892-2601
【福岡おもちゃ箱】
https://kobito.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=2697675
福岡おもちゃ箱は、福岡市南区にある輸入木製玩具とオーガニック商品のお店。シュタイナー教育関連の教材や情報も多数扱っています。
シュタイナーのおもちゃは、多方面にわたって品揃えが豊富です。
【天花地星】
https://www.tenkachisei.jp/profile.html
北海道にある小さなお店で、シュタイナー思想をベースにしたおもちゃや雑貨を取り扱っています。
初めから完璧なシュタイナー教育の実践は難しいので、できるところから小さな実践をしてくための小さな一歩のお手伝いを目指しています。
プレイクロスがかなり充実しています。
https://www.tenkachisei.jp/toy/index47.html
【クルテク】
https://www.krtek.ne.jp/category/item/method/steiner/
新潟市中央区にあるヨーロッパの木のおもちゃとボードゲームのお店。美しくおもしろいおもちゃと楽しいゲーム、豊かな遊びのヒントをお届けします。
シュタイナーだけでなく、モンテッソーリやフレーベルといった教育思想ごとにおもちゃを検索することもできるようになっています。
【レインボーリーブス】
https://rainbowleaves.ocnk.net/
シュタイナー教育に関連した商品や自然素材を使ったおもちゃや雑貨を販売しているお店です。三鷹市井の頭にあり、京王井の頭線の三鷹台駅から徒歩6、7分のところにあります。
おとなや子どもの毎日の暮らしに「こんな物に囲まれていたい」自分と子どものまわりを「こんなものでつつんであげたい」と思うものを紹介しています。
◆手作りする
たとえば、ウォルドルフ人形を手作りする場合、下部にご紹介する【スウェーデンひつじの詩舎】のホームページを参考にされることをお勧めします。
ウォルドルフ人形を作ることの意義含め、対象年齢ごとにふさわしい人形やキットの紹介がされています。
【スウェーデンひつじの詩舎】
ライターよりひとこと
ここまで、シュタイナーの代表的なおもちゃの種類や特徴、どこで手にはいるのかなどを見てきました。
繰り返しになりますが、シュタイナー教育に適したおもちゃに求められる本質的な要素はある程度存在しますが、だからと言って、これが絶対というものがあるわけではありません。
こどもたちの発達段階に合わせて想像力を高めていくことがあくまでも目的です。上記の記事を参考にしていただきながら、ご自身の五感とこころでおもちゃ選びをしていただけたらと思います。
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