シュタイナー教育の特徴「エポック」とは?その取り組みについて

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シュタイナー教育におけるエポックの位置づけ

シュタイナー教育とエポック

シュタイナー教育は、単に知識だけではなく、豊かな感情や新しい創造性を育むことを重要視しています。ですが、シュタイナー「教育」とあるように、「教育」である以上、知識を得る学習の過程もまた重要となります。一般の学校は、科目ごとに指定の教科書を用いて、学習を進めていきます。一方、シュタイナー教育を実践する学校は、指定の教科書を用いず、「エポック」という時間で学習を進めていきます。

エポックの時間は毎朝105分と決まっており、3週間という一定の間隔で集中的にひとつの科目を学習します。そして、集中的にひとつの科目を学習した後は、また異なる科目を学習していきます。つまり、一般の学校にある「算数」や「社会」といった科目ごとの時間割に基づいた学習ではなく、エポックという時間で「算数」や「社会」といった科目を集中的に学ぶのが特徴です。

エポックとは

そもそもエポックとはどういった意味の言葉なのでしょうか。辞書で引くと「歴史や科学、文化などの分野で、特定の時代や時期を指す言葉。重要な出来事や変化が起こったことで特徴付けられる時代を表す際に用いられる。」とのことです。

シュタイナー教育におけるエポックは、身体や音楽による表現活動等も盛り込み、身体性を伴った学習による知識の定着を目指しています。これは暗記による知識の定着ではなく、身体性を伴った知識の定着を図ることにより、より深く学びを得ることができるという点を重視しているためです。

また、シュタイナー教育は、原則小学校から中学校にあたる8年間は、同じ担任がエポックを担当するため、担任ごとに異なる指導方法を取ることがままあるそうです。

そして、エポックでは特定の教科書は使いません。代わりにエポックノートという白紙のノートに生徒自身が書き込むことにより、自分自身の教科書となるように工夫がなされています。

単に板書を書き写すだけではなく、自分自身で思考を巡らせ、ノートを完成させる過程は、シュタイナー教育が目指す教育のひとつの形であると言えるでしょう。

シュタイナー教育におけるエポックの重要性

シュタイナー教育におけるエポックは、ひとつの科目に集中的に取り組む点が特徴です。ひとつの科目にじっくりと取り組むからこそ、単に知識を詰め込むのではなく、知識のバックグラウンドも深く知ることができます。

たとえば、暗記した数学の公式を忘れてしまった場合でも、なぜその公式が成立するのかの根拠をしっかりと理解できていれば、たとえ公式を思い出せなくとも、しっかり回答できるようになる訳です。エポックはただ教員が公式の知識を与えるだけではなく、なぜ公式が成立するのかまで深掘りして学習し、知識の定着を図っていきます。

そうして得た知識は、暗記した知識と異なり、自分自身で理解した知識となり、結果として応用性も増します。そして、そうした学習を続けていくと、いわば「点の知識」が、あるときに点と点が結ばれて「線の知識」になり、しっかりとした基盤がある知識体系となるのです。

エポックの特徴やメリット・デメリット

エポックと通常の授業との違い

エポックと通常の授業の違いを大きく3点挙げましょう。

第一に、エポックは毎朝105分の時間を使い、約3週間の時間をかけ、ひとつの科目の学習に集中的に取り組みます。一般の学校の通常の授業、いわば時間割に従った学習ではなく、「ひとつの科目の学習に集中的に取り組む」点が大きな違いです。

第二に、原則教科書を使わない点です。通常の授業では生徒全員が同じ教科書を使って学習を進めるのに対して、エポックは生徒自身が個々に作るエポックノートが教科書の代わりとなります。いわばエポックノートは、生徒自身で作り上げた教科書です。その生徒自身で作り上げた教科書は、千差万別で、同じものは決してありません。どういった形で知識を吸収していくかは生徒次第なのです。

第三に、通常の授業では決まった時間割に沿って、継続的に学習が進んでいきます。それに対してエポックは、ひとつの科目の学習に集中的に取り組んだ後、その科目とは意図的にしばし距離を取る点です。実際にシュタイナー学園の生徒さんに話を聞くと「学習した内容と向き合う時間」と表現していましたが、意図的に「忘れる」時間を作るのです。そして、ふたたびその科目に戻ると、自然と知識が重層的に積み重なっていくという訳です。こうして忘れる、そしてまた思い出すといった学習により、知識の定着を図るのです。

エポックのメリット

シュタイナー学園の生徒さんに話を聞くと、エポックは、暗記による知識の定着ではなく、意図的に忘れる時間を経ることで、一度ゆっくり学んだ内容と向き合う時間ができ、より根本的な理論や考えを知識として得ることができるメリットがあると言います。

前述した数学の公式の話題と同じですが、根本的な理論を理解していることは、長期的な視野で学習を進める上で大きなメリットです。単純に暗記した公式といった知識は、一旦忘れてしまうと、学習に用いることができません。しかし、根本的な理論を理解した上で公式を導く力が備わっていれば、単純に暗記した公式よりも応用性は高まるでしょう。

エポックのデメリット

同じくシュタイナー学園の生徒さんに話を聞くと、外部の模試や予備校等で必要となる一般的な暗記学習に対する耐性が育ちにくいというデメリットがあると言います。その生徒さん曰く「どうしても暗記勝負の世界史や英単語などは劣る」とのことで、暗記で点数評価がなされる科目に対する力は付きにくいのかもしれません。

ただ昨今はAO入試や推薦入試等も充実しており、そうした進路を選択する生徒さんも多いようです。しかし、共通試験等を利用する場合には、並行して予備校に通学する生徒さんもいるようです。

一度「忘れる」ことの大切さ

前述したように、通常の授業では決まった時間割に沿い、継続的に学習が進んでいくのに対してエポックは、ひとつの科目の学習に集中的に取り組んだ後、その科目とは意図的にしばし距離を取り、「忘れる時間」をつくります。この意図的に「忘れる時間」を取るのは、シュタイナー教育におけるエポックの重要な点です。

学習した知識は誰しも忘れます。しかし、シュタイナー教育は、「忘れる」ことを大切にしています。シュタイナー教育は、あくまでも「忘れる」ことは表面であり、学習した成果は、その生徒の内面に残っていると考えます。そして、「忘れる」そしてまた「思い出す」ことが、重層的な学習に繋がっていくのです。

具体的なエポックの取り組み

シュタイナー教育を受けている生徒さんはどういったエポックノートを作って、自分自身のオリジナルの教科書にしているのでしょうか。今回はシュタイナー学園高等部2年生に在学しているSさんにご協力をいただいて、実際にエポックノートを拝見させていただきました。

算数・数学(かず)

算数・数学は、エポックノートだけではなく、学習の進捗に応じて、担任の先生が作った独自のプリントで学習することもあります。このプリントでは円周角の定理を学んでいますが、円周角の定理に沿って、実際に証明問題を解いています。

実際のエポックノート(算数・数学)
シュタイナー学園11年生(高校2年生)の生徒が書いた実際のエポックノート(算数・数学)の画像

国語(ことば)

島崎藤村の詩「初恋」の一節を実際に書いて、7文字と5文字の組み合わせからなる優美な七五調のリズムを学習しています。教科書的には「文語定型詩」と呼ばれる「初恋」ですが、こうして書いて実際に読むと、7文字と5文字のリズムで音が並んでいると分かります。

実際のエポックノート(国語)
シュタイナー学園11年生(高校2年生)の生徒が書いた実際のエポックノート(国語)の画像

理科

「発生学」と題したエポックノートには、宇宙と人間のリズムが詳しく書かれています。特筆すべきは、月の周期と月経(生理)を結び付けて学習している点です。通常の授業は、「月の周期」はこの単元、「月経(生理)」はこの単元と分けていますが、エポックではそうした垣根を越えている様子が伺えます。

実際のエポックノート(理科)
シュタイナー学園11年生(高校2年生)の生徒が書いたエポックノート(理科)の画像

社会

実際のエポックノート(社会)
シュタイナー学園11年生(高校2年生)の生徒が書いたエポックノート(社会)の画像

誰しも社会の授業で教科書や資料集といった教材で世界地図を見た経験はあるかと思いますが、エポックでは実際に世界地図を描いて学習を進めます。筆者も「この国はこのあたりだったと思うけど、正確な位置は分からない」といった経験が何度もありますが、実際に自分自身で世界地図を描けば、より地理に対する理解が深まることでしょう。

実際のエポックノート(社会)
シュタイナー学園11年生(高校2年生)の生徒が書いたエポックノート(社会)の画像2

「世界史」に該当する単元も、モスクワ大公だったイヴァン4世にはじまり、2023年現在ロシアの軍事侵攻を受けているウクライナの問題も絡めて学習していることが分かります。実際にウクライナの首都であるキーウの歴史にも細かく触れており、より深い学習に取り組んでいることが伺えます。

家庭でできるエポック

シュタイナー教育を行っている学校におけるエポックをよりよく知りたい方や家庭でできるエポックに興味のある方には、『シュタイナー学園のエポック授業~12年間の学びの成り立ち~』(2012)シュタイナー学園 (編集)をまずお読みになることをおすすめします。

シュタイナー学園のエポック授業~12年間の学びの成り立ち~ 2012/6/1 シュタイナー学園(編集)

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ライター

横浜市生まれ/横浜市育ち。藤野地区在住。2012年に慶應義塾大学総合政策学部へ入学。殊に複雑な医療政策を軽妙に語る先生に魅了され、研究の道へ進む。2016年に慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科へ入学。修了後は、医学系書籍編集社にて編集職、一般社団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部にて研究職を経て、現在は相模原市地域おこし協力隊(ライフスタイル領域担当)として活動中。専門は広義の医療政策。趣味は、ダイビング(PADI認定ダイブマスター/プロ資格)、釣り(一級小型船舶免許)、旅行、同人誌執筆等。

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