ホリスティックセラピーとは?
社会や環境の大きな変化の波がつぎつぎに押し寄せ、常にストレスにさらされがちな現代社会。風邪のように薬を飲めば対処できる病だけでなく、原因不明の不調や、西洋医学ではこれといった対処法が見つからない症状に悩まされる人も増えてきています。
そんな中で西洋医学だけでなく、数多くのホリスティックセラピーの魅力が見直されつつあります。ホリスティックとは “全体” を意味しています。
西洋医学では骨や筋肉、血管や神経、内臓、組織や細胞などを個別にとらえていますが、ホリスティックセラピーでは、心と身体は密接につながっており、何かトラブルが起きたときにはその部分だけに注目するのではなく、その人の全体のバランスを整えるようにアプローチをします。
世界のホリスティックセラピーをあげますと、近代医学から派生した、アントロポゾフィー医学、オステオパシー、ホメオパシーや、インド医学であるアーユルヴェーダ、中国医学である漢方や鍼灸から、心理療法や瞑想に気功まで、多岐にわたって存在しています。
こちらの記事では、ホリスティックセラピーの中でもルドルフ・シュタイナーが創始した、アントロポゾフィー医学についてとりあげてみたいと思います。
※日本で一部の著名な方が、「シュタイナーはホメオパシーの影響を受けている」と主張されていることで誤解されている場合があるようですが、ホメオパシーは、アントロポゾフィー医学より100年ほど前からドイツにあり、アントロポゾフィー医学とは別物です。
アントロポゾフィー医学とは?
ルドルフ・シュタイナーは、イタ・ヴェークマン医師とともに、1920年代にアントロポゾフィー医学を創始しました。アントロポゾフィー(人智学)を基盤としたアントロポゾフィー医学は、従来の医学を補完しながらホリスティックなアプローチを取り入れた医学です。
現在ではヨーロッパを中心に世界 60 か国以上に広がり、ドイツやスイスでは公的保険が適応される病院や診療所があります。日本でも1999年頃から実践にむけ、様々な取り組みが行われ、今ではアントロポゾフィー認定医、認定医療機関もできています。
シュタイナーは人間は、体、エーテル体、魂(アストラル体)、そして自我(霊)から成り立っているという4つの構成要素で考え、全体性からとらえることを大切にしていたように、アントロポゾフィー医学では病気だけを見るのではなく、その人全体を見ることで、病気の原因となっているバランスの乱れを調和し、回復のプロセスを進めていきます。
西洋医学では、科学的根拠のあるものや、目や顕微鏡で確認することが出来、思考で理解、判断できるものを大切に扱っていますが、アントロポゾフィー医学では、目や顕微鏡で確認できるものの他に、目に見えない構成物があり、それが私たちの世界や肉体、精神にとって重要な役割を担っているとしています。
アントロポゾフィー医学の特徴的な療法としては、生体にそなわる自然な回復力を促すことを目的として、音楽、彫刻、絵画、身体芸術、詩の朗誦など、人間の文明の中で培われてきた芸術活動を治療として行っていきます。(例・音楽療法 ・歌唱療法 ・絵画療法 ・造形療法 ・オイリュトミー療法)
必要があれば、手術を含めて現代医学的な治療手段が用いられますが、原則的にはできる限りその人の持つ自然治癒力を刺激し、活性化する方法が取られます。
アントロポゾフィー医療のさまざま
アントロポゾフィー医学の最大の特徴は芸術療法ともいえるでしょう。
芸術活動は、その人自身の自然で個性的なあり方への理解や治療への能動的なかかわりを促し、自己治癒力を高め、全人的な調和へと導く大きな助けとなります。オイリュトミー療法、音楽療法、彫塑や絵画療法、言語療法などが、病状にそって選ばれ、患者さんを精神的・肉体的側面から援助します。
一般社団法人 日本アントロポゾフィー医学の医師会公式サイトのスクリーンショット
音楽療法
私たちの日々の暮らしにある「音」に意識を向けてみると、世界はさらに豊かになります。
アントロポゾフィー音楽療法では、私たちの周りの音と向き合い、寄り添っていくことで、自らの命を健やかに育み、自己治癒力を高めてゆきます。呼吸やメロディ、ハーモニー、リズムや響きにのって、心の扉を開いてみましょう。
一般社団法人アウディオペーデ公式サイトのスクリーンショット
絵画造形療法
自ら創造し、何かを形作ることは、わたしたちの内面を癒し、内なる自己治癒力を高めてくれます。芸術は人間の本来の成り立ちと深く関わっているのです。
芸術を通して自分自身と丁寧に向き合い、内なるバランスを取り戻すことで、偏った癖や生活習慣を変えて調和のとれた生き方をめざします。
アントロポゾフィーに基づく絵画・造形療法士の会公式サイトのスクリーンショット
オイリュトミー療法
オイリュトミーはギリシャ語で「調和の取れた美しいリズム」を意味します。ルドルフ・シュタイナーによって1912年に始められ、「オイリュトミー療法」は、さらにそこから発展した運動芸術療法です。
オイリュトミーでは、言葉の母音や子音に内在する「音」のもつ根源的な働きを動きとして表現。それぞれの動きは、体の各器官と密接なつながりを持っており、オイリュトミー療法では、症状に応じてこれらの動きを使い分けます。動きにより、体の機能を活性化及び調整すると同時に、心や精神にも働きかけて自己治癒力を高めます。
一般社団法人オイリュトミー教育芸術協会 EAJ公式サイトのスクリーンショット
ホリスティックにとらえることの大切さ
筆者の個人的な体験になりますが、全体性をとおして物事をみることの大切さを実感する出来事がありました。
2021年の冬頃から、2歳の息子のうなじと背中に原因不明の肌荒れが現れたのです。腕利きの皮膚科の先生を紹介してもらって、早速診てもらったものの、診断では「アトピーではないですが、体質ですね。冬の寒さや乾燥による肌荒れだと思いますから、炎症を抑える薬をだしておきます。」とのことで、ステロイドを処方されました。
肌荒れが早く治るようにの一心で、ステロイドを使いましたが、塗り始めるとびっくりするほどすぐに肌荒れがおさまるのに、しばらく時間がたつと再発。しかも前よりももっとひどくなっていくのです。何度かそれを繰り返しているうちに、1年も過ぎたでしょうか。はじめのうちはうなじと背中に小さく一箇所荒れていたのが、だんだんと背中の肌荒れも大きく、何か所も肌荒れがみられるようになっていきました。
肌荒れは次第に悪化し痒みも出てきたようで、背中を壁にゴシゴシと擦りつけるようになってしまいました。
お医者様に診てもらっても、またステロイドを処方されるだけだし、一体どうしたらよいのだろうかと思い悩む日々。そんな中、2023年4月ある農業セミナーに息子と一緒に参加したのです。ルドルフ・シュタイナーはエコロジカルで宇宙的なバイオダイナミック農法という農法を提唱していますが、その農業セミナーの先生の考え方も、シュタイナーと同じく宇宙を含む自然の全てと調和を目指す、というものでした。
先生は息子の肌を見るなり、一言「牛乳を飲むのをやめたらいいよ」と助言をくださったのです。肌荒れの炎症をステロイドで無理やり抑える、という対処療法ではなく、息子自身の治癒力を阻んでいるものを排除し、自らの治す力を高めていくというアドバイスでした。早速実践をしたところ、みるみるうちに肌荒れは収まっていきました。
何も薬は使っていないのに、それから約1か月ほどであれほど悩み続けた肌荒れがほぼ消滅してしまったのです。
背中の左上にかすかに肌荒れの跡は残っているものの、すっかりよくなりました。何をしても改善しなかったお肌が、こんなにすぐに変化するなんて…。私にとって、人間の体の持っている力、自然回復力の偉大さをまざまざと見せつけられた出来事でした。
アントロポゾフィー医療について
~すみれが丘ひだまりクリニック 安達晴己先生へのインタビュー~
アントロポゾフィー医療の実際について、横浜でアントロポゾフィー診療をされている、すみれが丘ひだまりクリニック 安達晴己先生にお電話でお話しを聞かせていただきました。
すみれが丘ひだまりクリニックの安達晴己先生。
シュタイナー教育を通じてアントロポゾフィー医学をお知りになり、2004年に日本でアントロポゾフィー医師養成セミナーが始まった時期にアントロポゾフィー医学の研修を始めた安達先生。
1人の人間を肉体、エーテル、アストラル体、自我という4つの側面で捉える、シュタイナーの人間観とそれに基づく医療があるなら学んでみたいと感じられたとのこと。
子供のころ、人造人間のアニメをみて「人工の肌や内臓、骨格をつくってそれらを寄り集めたら、自立した1人の人間になるのだろうか?」という疑問を感じていた安達先生は、医学部の大学在籍時に氣功に出会います。
その頃から通常医療だけでなく、漢方や東洋哲学にも関心を持たれていましたが、ある日氣功の授業の中で、シュタイナーの本が偶然とりあげられたことがありました。シュタイナーとの出会いはあったものの、大学在籍時には通常医療を学ばれ、5年後にご結婚とご出産。お子様の教育を考えた際にシュタイナー教育に出会い、アントロポゾフィー医療のことをお知りになって、2010年にアントロポゾフィー認定医の資格を取得され、その後は福岡でアントロポゾフィー医学のクリニックを開業、経験を積まれ現在は横浜市にある、すみれが丘ひだまりクリニックにて診療をされています。
本日はお時間をつくってくださりありがとうございます。
アントロポゾフィー医療では、「芸術療法」が特徴的だと思いますが、具体的にどのような症状に対して、芸術を通じて働きかけるのかとても興味があります。たとえばアトピーの患者さんに対してはどのように診療をされて、どのような療法をおすすめされるのか、教えていただけますでしょうか?
そうですね、アトピーの患者さんと申しましても、みなさまお一人お一人のバランスや体質が異なりますので、あくまでも例にはなりますが、はじめにその方のお身体のバランスを見ていきます。
見たり聞いたり、感じたり考えたりする領域「頭部」と、外に向かって働きかける、行為をする「手足」。そしてその二つをつなぐ「胸部」。頭部が活性していたり、どちらかというと手足が活性していたり、それぞれの方によって個性があるのですが、よい悪いはないのですね。
アトピーでお肌が炎症がある方は、一概にはいえないのですが比較的感覚が細やかであったり、動きが少なかったり、じっとよく考えられる方が多いようです。もちろんその逆のタイプの方もいらっしゃいます。
アントロポゾフィー医療では、その人の中のバランスの乱れが何らかの不調となって、体にでてきていると捉えていますが、もともとのご自身が持っている傾向が強くなりすぎていたとしたら、それらをどのようにバランスを整えていこうかと考えます。
アトピーで炎症を起こしている方のひとつの傾向としましては、繊細でまじめでいらっしゃって、動きが硬くなりがちというものがあります。(※あくまでも傾向であり、アトピーの方全員がそうというわけではありません。)
そのような場合は、絵画療法を用いまして、硬い輪郭のある絵ではなく、水彩のにじみ絵でやわらかさを体験したり、色の光を体験して、バランスを調和させていく、ということもありますね。
オイリュトミーで、柔らかい動きを身体で表現していくということもしていく場合もあります。
芸術療法がどのような理由で行われるのか、分かりやすくイメージできました。芸術療法につきまして、もう少しお話をお聞かせいただけますか。
オイリュトミーなどの芸術療法を行うことにより、その方のバランスの偏り、どこかが過剰になっている部分があったらそれを調和させるという方向を目指していきます。
お薬はどちらかというと受け身になりがちですが、芸術療法は芸術療法は自ら行為して、調和させていきますのでその方の主体性を引き出すものにもなりますね。
大人の方がオイリュトミーを行う中で、自分にはこういう部分があるな、とか、自分の中のこういうところが過剰かもしれないなといったように気付かれることもあります。
副鼻腔炎は慢性化しやすいのですが、お子さんがオイリュトミーを行うこ
とで鼻水がとまったり、鼻詰まりが減るという方がありました。オイリュトミーの動きが、自らのバランスを調和させて分かりやすい結果がでた例ですね。
お子さんの場合は、鼻水がとまったという自らの体験をもとに「めんどくさいなぁ、でも鼻水とまったし、仕方ない、やるか」というように芸術療法を続けるモチベーションになることもあるようです。
芸術療法は医師やセラピストが、その方の必要性を見てとって勧めます。
療法を受けた変化や効果は、患者さん自身が自覚される場合が多いですが、病気の質や、子供の年齢などによってさまざまです。
そうなのですね、興味深いお話をありがとうございます。アントロポゾフィー医療だと、アトピーや病気の症状は速攻で治るというよりかは、ゆるやかに改善していくイメージがあるのですが、いかがなものでしょうか…?
アントロポゾフィー医療でも、たとえばお肌の炎症や湿疹そのものに対応していく方法と、体質やその方の傾向に対して働きかける方法の2つがあります。
医師によって方針の違いはありますが、わたしは体質的な治療だけでなく、西洋医療を用いる場合もありますし、スピーディな改善を目指すこともあります。皮膚の状態が悪いことが、子どもさんの成長全体にとって良くないと判断した場合は、ステロイドを使うこともありますよ。
アントロポゾフィー医学と西洋医療のどちらも大切になさっているのですね。たとえばアトピーの分野におきましてはアントロポゾフィー医療を受けて、どのように改善なさった患者さんがいらっしゃるのかよろしければお教えいただけますか?
アトピーですと、乳児湿疹から肌荒れがなかなか治らなかったお子さんが、アントロポゾフィー医療を受けて、幼児になって冬の時期に湿疹が少しでるくらいまでに改善された患者さんがいます。
お子さんですと、成長全体を見ていく中での医療になりますね。大人の場合はアトピーの湿疹に対しての治療と、全体的に見ていくことの両軸での医療を行っています。
ところで、すみれが丘ひだまりクリニックの安達先生のブログを拝見しましたが、アントロポゾフィーのお薬は隕石の鉄を用いられたり、興味深いものが多いですよね。
すみれが丘ひだまりクリニックの安達先生のブログ
【Blog】アントロポゾフィー医療における医薬品の紹介(1/2)のスクリーンショット
ご自身でもお風邪をひかれたり、日常生活で不調を感じられた際にアントロポゾフィー医療のお薬をお使いになる場面はありますか?
はい、もちろんです。はじめのころは風邪薬や偏頭痛のお薬など、まず自分で飲んでみて効果を実感できたものを、家族が体調を崩したときにすすめてきました。
実感や体験を重ねる中で、医療として使おうと確信が出来て、アントロポゾフィー医学の実践につながり、患者さんに処方しています。
実際にアントロポゾフィーのお薬を使用されての体験など、ぜひお伺いさせていただきたいです。
たとえば火傷をしたときに使うコンブドロンという薬があるのですが、何度も頻繁に塗らなければなりませんが、ちょっとした火傷でしたら、ステロイドぐらいによく治るんですよ。
(※大きな火傷の場合は病院にいくことが必要になります。お薬はご体質によって合う合わないや、併用する際に特に注意が必要なものもありますので、実際にアントロポゾフィーのお薬をご使用になりたい方は、クリニックでの受診をおすすめさせていただきます。)
わたしは以前は片頭痛に悩まされていまして、ロキソニンなどの痛み止めを飲むことも多かったのですが、アントロポゾフィー医療に関わるようになり、水晶や鉄が配合されたお薬を片頭痛のはじまりに飲むようになりました。そうすると、痛みが悪化しないのです。
頭痛がはじまるまえにぼんやりするような頭が重いような感覚がくるのですが、薬を飲むことでスッキリして頭痛まで至らない。1日6回は飲める薬なので、すぐに治らないときに何度か飲むこともあります。
通常の痛み止めを飲むと、痛みを薬で抑えますが、その後なんとなく頭がぼんやりとしたりだるさや眠気を感じて、眠ってやっと回復するというような経過をたどるのですが、、アントロポゾフィー医療の薬を飲むと、頭痛が治ったあと、かえってスッキリした感覚があります。
頭痛を薬で抑えた、というよりは本当に自分で頭痛を乗り越えたというような体感です。アントロポゾフィーの薬を飲むようになってから、片頭痛の起こる回数も減りましたし、頭痛の程度も随分軽くなりました。
実際に、お薬を飲まれた方で、「また飲みたい」というようにリピートされる方が多いのも特徴です。
貴重な体験をお聞かせくださりありがとうございます。お話をお伺いして、アントロポゾフィーのお薬にとても興味が湧いてきました。
よろしければ、すみれが丘ひだまりクリニックにも取材にきてくださいね。色彩や建築物の構造などシュタイナー建築に基づいてつくられていますので、実際に足を運んでくださると感じるものがあると思います。
日本でアントロポゾフィー医療がうけられる場所
すみれが丘ひだまりクリニック(神奈川・横浜)
すみれが丘ひだまりクリニック(神奈川・横浜)公式サイトのスクリーンショット
※2015年4月に日本で初めてアントロポゾフィー医学の認定医療機関(Anthromed Clinic Network)として認められました。
ひかりのつぼみ自由クリニック(神奈川・藤野)小林啓子先生
ひかりのつぼみ自由クリニック(神奈川・藤野)小林啓子先生紹介サイトのスクリーンショット
佐野川クリニック(神奈川・藤野)小林國力先生
佐野川クリニック(神奈川・藤野)紹介サイトのスクリーンショット
ほりクリニック (東京・蒲田)
ほりクリニック (東京・蒲田)公式 サイトのスクリーンショット
医療法人 あげつまクリニック(愛知・豊田)
医療法人 あげつまクリニック(愛知・豊田)公式サイトのスクリーンショット
小さいおうち自由クリニック(福岡県・福津)
小さいおうち自由クリニック(福岡県・福津)公式サイトのスクリーンショット
世界でアントロポゾフィー医療がうけられる場所
アーレスハイム・クリニック(スイス)
アーレスハイム・クリニック(スイス)公式サイトのスクリーンショット
2014年4月、ルーカス・クリニックと隣接するアントロポゾフィーのイタ・ウェグマンクリニックが合併し、アーレスハイム・クリニックが設立されました。
アントロポゾフィー医学を学ぶには
ルドルフ・シュタイナーは「アントロポゾフイー医学は、今までの積み重ねてきた医学にとって代わるのではなく、むしろそれを拡大すべきものだ」と主張しました。
そのため、アントロポゾフィー医師は全員、まず最初に通常の医学の資絡を取得し、そのうえで人間の健康と病気についての精神科学の観点から学ぶ必要があります。
2020年より、日本でも国際的ガイドラインに則ったアントロポゾフィー医学認定医養成コースが始まっています。2018年にスイス・ドルナッハのゲーテアヌム精神科学自由大学医学部門の会議で決定された国際研修ガイドラインは下記サイトに掲載されています。
参考 一般社団法人日本アントロポゾフィー医学の医師会公式サイト
参考 精神科学自由大学のアントロポゾフィー医学セクション本部のウェブサイト
ゲーテアヌム/医学セクション(ドイツ語・英語)
精神科学自由大学は、ルドルフ・シュタイナーが建設したスイス・ドルナッハのゲーテアヌムにあります。
創始者シュタイナーはどんな人?
ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)は、バルカン半島に生まれ、オーストリアやドイツで活動した神秘思想家、哲学者、教育者です。
ゲーテの研究や美学史研究ののち、アントロポゾフィー(人智学)という精神運動を創立しました。アントロポゾフィー(人智学)とは、常につながりや全体性を大切にし、個の肉体、精神、霊を周囲の世界とつながりを持つ、ホリスティックな存在として捉えることを推奨するものです。
シュタイナーの人間観をもとにしたヴァルドルフ教育は、現在日本国内でも多くの教育現場で実践されており、医学だけでなく、教育、芸術、社会運動、自然科学、農業など、影響は多岐にわたっています。
創始者イタ・ヴェーグマンはどんな人?
イタ・ヴェーグマン(1876 – 1943)は、インドネシアでオランダ人植民二世として生まれました。
29歳のときにシュタイナーと出会い、アントロポゾフィー運動に精力的に携わりながら、チューリッヒ大学で学び、1911年に医師免許を取得。シュタイナーのサポートのもと植物のエキスを使用した医薬品を作り出し、認められていきました。
1921年にはアントロポゾフィー医学を実践するクリニックをアーレスハイム(スイス)に設立します。ルドルフ・シュタイナーとオスカー・シュミーデルらとともにアントロポゾフィー医学の原則を確立し、ヴェレダ社を共同設立するに到ります。
ヴェレダ社は、シュタイナーの提唱する、究極の有機農法ともよばれる「バイオダイナミック農法」で栽培された植物を中心にスキンケアやボディケア、ベビー用品など幅広く商品を展開。ヨーロッパでは自然医薬品メーカーとしての地位を確立しています。
ヴェレダ公式サイトのスクリーンショット
アントロポゾフィー医学におけるシュタイナーの実績
1910年代終盤以降、シュタイナーは医学に対する新しいアプローチを創造するために、医師や化学者と連携しました。1921年ドイツのシュトゥットガルトとスイスのアーレスハイムに、最初の治療施設と、後のヴェレダ社とヴァーラ社の前身となる付属の薬剤研究所がつくられました。
同年、医師イタ・ヴェーグマンと化学者オスカー・シュミーデルをはじめ、医師・薬剤師らが、シュタイナー主導のもと、患者の要求に応えるためのアントロポゾフィーの活用法を定める作業へと着手します。
人体にはすばらしい自己治癒力が備わっているという理解をベースに、それでも崩したバランスを取り戻すのに何らかの助けが必要になるときもあるという考えのもと、体の治癒力を促進する独自の療法を取り入れ、科学的・哲学的知識への深い理解を土台に、シュタイナーらはアントロポゾフィー医学をたちあげるに至りました。
シュタイナーらが創始したアントロポゾフィー医学ですが、シュタイナーの思想を基盤に現在でも発展し続けています。
アントロポゾフィー 書籍
シュタイナーのアントロポゾフィー医学入門
監修(社)日本アントロポゾフィー医学の医師会(ビーイング・ネット・プレス)
シュタイナーのアントロポゾフィー医学入門
小児科診察室【増補改訂版】
ミヒャエラ・グレックラー, ヴォルフガング・ゲーベル,入間カイ訳(水声社)
小児科診察室【増補改訂版】
アントロポゾフィー医学の本質
ルドルフ・シュタイナー イタ・ヴェークマン,中谷美恵子 浅田豊訳(水声社)
アントロポゾフィー医学の本質
私たちの中の目に見えない人間ー治療の根底にある病理
ルドルフ・シュタイナー, 石川公子 小林國力訳(涼風書林)
私たちの中の目に見えない人間ー治療の根底にある病理
解剖学
(ルイス・ボルク・インスティテュート, 藤原卓也訳 自費出版)
解剖学
アムステルダム大学の解剖学の教授だったルイス・ボルクを記念して作られた、持続可能な農業、健康と栄養を研究し助言を行うオランダの団体、ルイス・ボルク・インスティテュートが出版している医学生向けの短いテキストのシリーズ。英語版のpdfは以下から無料でダウンロードできます(全84ページ)。
ほかにも生理学や薬理学、内分泌学などがあり、英語版のpdfは無料で下からダウンロードできます。
胎生学
(ルイスボルク・インスティテュート, 藤原卓也訳 自費出版)
胎生学
同じく胎児の発達に関する発生学。英語版のpdfは以下から無料でダウンロードできます(全64ページ)。
子どもの歯の生え変わり
アーミン・フーゼマン, 本田常雄訳(涼風書林)
子どもの歯の生え変わり
才能と障がい
ミヒャエラ・グレックラー, 石川公子 小林國力訳(涼風書林)
才能と障がい
オイリュトミー療法講義
ルドルフ・シュタイナー , 石川公子 中谷三恵子 金子由美子訳 小林國力監修 (涼風書林)
オイリュトミー療法講義
認知症 (シュタイナーの精神科学にもとづくアントロポゾフィー医学の治療と介護の現場から)
ヤン-ピーター・ファン=デル=シュティーン, 石井秀治訳 (イザラ書房)
認知症 (シュタイナーの精神科学にもとづくアントロポゾフィー医学の治療と介護の現場から)
ヤドリギ がんを癒す自然の力
ヨハネス・ヴィルケンス,ゲート・ベーム 著 宇佐美一美 訳 小林國力 監修
ヤドリギ がんを癒す自然の力
参考 一般社団法人 日本アントロポゾフィー医学の医師会推薦 アントロポゾフィー医学の本
参考 シュタイナー教育・幼児教育・教材と雑貨 天花地星(てんかちせい)
暮らしにアントロポゾフィー医療をいかすには
アントロポゾフィー医学と同時に始まったヴェレダ社は、シュタイナーの「バイオダイナミック農法」で栽培された植物を使い、スキンケアやボディケアの製品を幅広く生産している自然医薬品メーカーです。
筆者が東京に住んでいたころ、自然栽培の野菜や有機野菜は高くて正直手が出せませんでしたが、藤野に引っ越してからは、藤野で自然栽培や有機農法でお野菜を作っている農家さんのお野菜を食べる機会が増えました。
トマトひとつ比べてみても、スーパーで売っているトマトとはまるで違うお野菜みたいに、甘みや味わいが異なります。スーパーで買うカボチャはすぐに腐ってしまいますが、農家さんからいただいたお野菜はびっくりするほど日持ちします。一目見ただけでは違いが分からなくても、味わいの深みやいつまでも腐らないという事実から、自然栽培でつくられた野菜たちの生命力の高さを実際に感じます。
藤野で自然農法を営む「野生農園ザ☆ばん」さんの畑で、春の野草を天ぷらでいただく機会があったのですが、その美味しかったこと。ヨモギの苦さとパリッとした触感に、春の恵みをそのまま体の内に摂り入れたように感じて、人生ではじめてヨモギの虜になってしまいました。それをきっかけに、アントロポゾフィー医療に基づくヨモギについての書籍に出会うご縁をいただいたのです。
”ヨモギは立派な花を咲かせようとするキク科の一員なのに、花の形成を拒むように生命的な領域に留まり続けようとします。これがヨモギの最大の特徴なのです。
夏が近づくと側枝を伸ばし始め、繊細な葉をつけるようになります。
こうしてヨモギは、旺盛な地上的生命力と同時に天上的な質も保持し続けます。
このヨモギの姿こそ、とくに女性の月経に関わる諸症状への有効性が期待される、薬用としてのヨモギの源泉です。”
~引用「月とヨモギ 女性性に寄り添う薬草」 吉田秀美 丹羽敏雄 涼風書林
シュタイナーは植物の持つ力を非常に重要視していました。
その植物をよく観察し、本質的な力や薬効作用を読み取り、その力を治療にいかすにはどうしたらよいのかを考え、アントロポゾフィー医学に基づき、多くの薬やスキンケアなどの製品を生み出したのです。ルドルフ・シュタイナー著作「自由の哲学」の訳者・森章吾さん(1988、1991ゲーテアヌム自然科学セクション、1年研究研究コース修了。1989、シュツットガルト教員養成ゼミナール高学年教師コース自然科学を修了。)のBlogにアントロポゾフィーとして、どのように植物を観察するのか詳細に解説してくださっています。
ご興味ある方はぜひご覧になってみてください。
参考 ルドルフ・シュタイナーから学ぶ(旧) 「ドクダミの観察」
もともと日本では、鍼灸や漢方などの東洋医療がもてはやされたり、「家庭でできる自然療法 東城百合子著」が広まっているように、自然の植物の恵みをいただいたり、ホリスティックなお手あてを大切にされている家庭も多いのではないでしょうか。
今回筆者はヨモギとのご縁をいただいたことで、近所の河原からヨモギをたっぷりいただき、はじめてヨモギオイルなるものを作成してみました。ヨモギオイルは、切り傷や火傷、虫刺されから、マッサージオイルやヘアケアまで万能で使えるオイルだそうです。
難しく考えすぎずに、まずは身の回りの自然の恵みの力を生かして、生活の中に取り入れていけたら、より豊かな暮らしを楽しめるのかもしれませんね。
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